MAEDAトシロー

レッテルコンプレックス ㉙ 中学生編

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どうも

 

前回の続きです。

 

 

 

《中3の章》

 

 

始業式を終えたら待ちに待ったクラス替えの発表である。

 

 

別に2年の時のクラスメイトも好きだったが、それもそれこれもこれである。

 

 

不安と期待を持ちながら、誰となるかという妄想に耽る。

 

中学生最後が最高の物になるかどうかはこの瞬間に決まる。

 

最初が悪ければ最後もそれが尾を引くと俺は思った。

 

 

 

 

(とりあえず面白いやつとランキング上位の女子が一緒になりますように)

 

 

 

「おっっ!やった!!」

 

 

 

さすがに声が漏れた。

 

二組ある中1組でメンバーが中々錚々たるメンツになった。

 

 

 

まず、中2から仲が良かった立木と岡本。

 

りょうは残念ながら2組にいったが、人気者のごんちゃん、ゆうき。

 

 

それに野球部のチームメイトや中1の頃から仲よくしていた男子とも一緒だった。

 

 

また、女子のメンツも中々良い。

 

 

 

(これは最高の中3になりそうだ)

 

 

 

この喜びはまだまだ続いた。

 

 

数日後、担任の先生が

 

 

「このクラスに、なんと、なんと、なんと……転校生がきます!」

 

 

 

「おーーー!!!」

 

 

 

もう男子の盛り上がりが半端ない。

 

田舎中学となれば転校生がくるのは一種のお祭りだ。

 

 

 

「先生!男子?女子?どっちー?」

 

 

「どっちと思うー?」

 

 

「わからんー!えーどっちー?」

 

 

 

「男子ですーーー!!」

 

 

 

「おーーーーーー!!!!」

 

 

 

ここでもまた男子の盛り上がりはヒートアップした。

 

男子同士で喋ったりして「どんなやつかな」というひそひそ話が辺りから聞こえる。

 

 

「明日の朝くるみたいだから、みんな仲良くしてねー」

 

 

「そんなの当たり前ー!!」

 

 

それでその日のうちは明日の転校生がどんなやつかという話でひっきりなしで学校を終えた。

 

 

次の日、俺は1人で学校に行きながら、

 

 

(どんなやつかなー)

 

 

と思いに耽けながら教室に入った。

 

 

みんなそわそわしていた。

 

そりゃそうだ。

 

序盤での転校生。

 

クラス替えと同じくらい重要な位置づけにある。

 

みんなの顔に期待と不安が見える。

 

 

朝のホームルームが始まった。

 

先生が喋りだし、

 

 

「では、昨日話してた転校生を紹介します!」

 

 

「谷口ひろし君入ってきてー」

 

 

 

そう言って、クラス中が転校生に全神経を傾けた。

 

 

「初めまして、谷口ひろしです」

 

 

そこには肉付きの良い、そして九州男児特有の濃い顔があった。

 

なんか面白そうな雰囲気だけどとっつきにくい、だけどふんわりとした空気が漂うようなそんな生徒だった。

 

 

挨拶も早々、ひろしは前日に準備された席に着き、1時間目の授業が始まった。

 

クラスメイト全員なんだかそわそわしている。

 

話しかけたいけど、授業中だしというジレンマに苦しんでいる様子だ。

 

 

1時間目が終わり、休み時間になった。

 

恒例の質問タイムである。

 

 

 

どこから来たのとかどこ中とか部活は何に入るのとかあっちの学校はどうだったとかどこに住んでるのとか。

 

そういった恒例行事が行われた。

 

男子は勿論、女子も数人話しに加わり中3の生活がこれで決まるかのように質問攻めした。

 

 

俺も無論その中に加わって話を聞いた。

 

どうやらひろしは、俺らの地元からそう離れていないだからと言って近いかというとそうでもない、車で1時間ちょっと程の学校に通っていたらしい。

 

部活は、野球部でキャッチャーをしていたからキャッチャーをしたいらしい。

 

また、親の都合でこっちに来ていて住んでいるのは俺らの町にあるそういった子供達の寮に入っているらしい。

 

ここは小学校の頃ソフトでお世話になっている寮なので俺や俺をソフトに誘ったキャプテンは知っている。

 

 

ひろしのプロフィールはざっとこんな感じだった。

 

 

 

話してみると意外と面白いやつでそのギャップに愛嬌がある。

 

人気者のごんちゃんと馬が合うようですぐ意気投合していた。

 

そうなるとひろしはごんちゃんとお笑いコンビを組んだようにふざけあった。

 

俺も岡本もお笑いキャラだった為、必然的に俺、岡本、ごんちゃん、ひろしで笑いチームが結成されたのだった。

 

 

 

我ら1組は強力な助っ人を手に入れた。

 

 

 

それからの学校生活は明るい雰囲気で包まれた。

 

これだけ1組に良いメンツが集まってしまって2組が残念なクラスだなと俺は思った。

 

 

 

ただそこはご愛嬌。

 

田舎中学なのでなんだかんだ言っても1組2組は隣同士。

 

しかも中3になると3年生だけが使えるベランダ的なところがあり、そこは3年生なら誰でも行き来できる。

 

なので休み時間、昼休みは1組、2組とも交流がある。

 

 

 

俺らは楽しい時間を過ごしていった。

 

 

 

しかし、1つ懸念材料がある。

 

そうひろしが野球部だということだ。

 

 

こうやって楽しく学校生活を送っている一方で俺の心配はいつもそこだった。

 

ひろしが俺を脅かす存在になるのではないか。

 

その思いが頭の中にあった。

 

 

 

前の中学でレギュラーだったということは、こっちの学校でも戦力になるだろう。

 

もしひろしがキャッチャーになるとしたら、現在キャッチャーをしている1個下のソフトボールでもキャッチャーをしていた豪腕キャッチャーはどこのポジションになるのか。

 

そして、こうやってお笑いキャラでワイワイと騒いでいる俺のキャラと野球部でのギャップを知ったらどんな風に思うだろうか。

 

困惑して軽蔑した目で見やしないだろうか。

 

 

 

そんなことばかりを岡本、ごんちゃん、ひろしとふざけながら考えていた。

 

 

 

数日後、ひろしは俺らの野球部に入部した。

 

 

ひろしは、俺よりも確実に上手かった。

 

キャッチャーをしていたということで肩も強く、肉付きのよさはしっかりとバッティングに活かされていた。

 

それに面白いキャラということでチームのムードメーカー的存在でもあった。

 

 

 

監督もひろしのポテンシャルを理解しひろしが正式なキャッチャーに決定した。

 

それまでキャッチャーを守っていた1個下の豪腕キャッチャーは、ライトにコンバートされた。

 

 

俺はとりあえず一安心だった。

 

ひろしなり豪腕キャッチャーがファーストに移されていたなら確実に俺のポジションは無くなる。

 

その時点で俺はベンチ落ち。

 

そう考えるとただただ俺は運が良かった。

 

これまでの試合でも芳しくない結果しか残せていなかった俺を監督が起用し続けたのは、ファーストに回す人員が少なかったからだ。

 

ファーストは死守できたが俺の打順は8番のままだった。

 

 

 

打順の中で1番打撃に期待されていないのが8番だ。

 

意外と誤解されるのが9番が1番打撃に期待されていないと思われているのだが、9番というのは1番に繋げるという意味では8番よりも打撃が重要視される。

 

俺は8番なのでとりあえず9番に繋げるということを1番に考えなければならない。

 

 

 

打撃に期待されていないということは裏を返せば守備専門の選手になる。

 

しかし、俺の守っているのはファースト。

 

ファーストは比較的に野手の中では簡単な部類に入る。

 

なのでどっちかというと打撃に期待されている守備に不安がある選手が守ることが多い。

 

 

 

俺の場合、打撃にも期待されていないプラス守備も安心できるような存在ではないという首の皮一枚繋がったレギュラーメンバーだった。

 

 

分不相応とはこういうのを言うのだろう。

 

 

とりあえずそれは置いといて俺の首の皮は繋がった。

 

 

 

しかし、俺としてはひろしの存在はひどく居心地が悪かった。

 

別にひろしが嫌いというのではないのだが、

 

ゆうきなどの小学校から一緒で、中1からは一緒に野球をやってきた仲間はもう俺の上達の悪さは口には出さないが周知の事実だと思う。

 

だが、ひろしは最近転校してきた。

 

俺の実情など何も知らない。

 

それに反比例するが如く、俺は学校ではお笑いキャラが定着しておりひろしもそれは知っている。

 

 

一体どっちのキャラを通せばいいのか分からずそれで練習中は葛藤してしまう。

 

学校ではお笑いキャラだが野球部の練習では日々黙々と陰で努力し、熱心かつ真面目な野球少年。

 

 

ひろしからしたら、せっかくクラスも一緒で野球もできるんだし、俺らでチームのムードメーカになって盛り上げようぜという気持ちだろう。

 

 

 

俺にはそれができない。

 

 

というより俺にはそんな余裕がない。

 

 

目の前の打球を捕るので精一杯。

 

送球を暴投しないように慎重に投げるので精一杯。

 

ピッチャーの投げた球を前に転がしてなんとかヒットを打つので精一杯。

 

 

 

こんな状態でチームの心配なんかしていられない。

 

俺にチームのムードメーカなんて荷が重かった。

 

 

 

それをひろしがいると嫌でも思い出され葛藤してしまう。

 

今までは付き合いが長かった連中同士で思い出されなかった学校でのキャラと野球部でのキャラに嫌でも向き合わなければならない。

 

 

こんな居心地の悪いものはないだろう。

 

 

だからと言って今さら野球部を辞めると言う勇気もないし、だからといってお笑いキャラをやるのは無理だ。

 

 

 

やはりここも時が解決してくれるのを待つしか無い。

 

 

時が経てばひろしも俺の実情が分かり、俺自身もひろしとの練習に慣れると思った。

 

 

 

(ここは我慢するしかない)

 

 

 

俺はそう思い野球の練習に精を出した。

 

 

バッティングも日々の自主トレ&バッティングセンターのお陰か以前よりもマシになっていた。

 

それでもスイングスピードは遅いし、ゆうきや山中に比べるまでもないと言ったところだった。

 

 

その頃、ゆうきのバッティングはどんどん磨きがかかり中1の時からしたら凄まじい成長だった。

 

親父も試合を見に来ては「ゆうきは凄かなー、としろーもゆうきにみたいに頑張らんば」と言っては俺を鼓舞した。

 

俺からしたらそんなことを言う親父も他人と変わらないものだなと思って聞き流していた。

 

 

 

 

(やっぱり頼りになるのは誰もいない)

 

 

 

 

もう俺には味方などいなかった。

 

 

親父は俺の素振りを見てくれたり、バッティングセンターなどに連れて行ってくれるが所詮はそこまで。

 

学校の友人も俺から何もかもさらけ出すわけではないし、そうなれば俺の内情など知りようもない。

 

俺の表情などを見て親身になってカウンセリングするようなやつなどいるはずがない。

 

もしいたとして俺も俺で打ち明けれるとは思えない。

 

 

 

そう考えれば、本当の俺を知るのは俺だけだし、俺以外の人間に到底理解などできやしないと思った。

 

 

 

そうなればやはり俺が何もかも抱え込まなければいけないと思った。

 

 

以前もこう考えてはいたが歳を重ねるごとにその想いは強くなった。

 

 

 

それから月日が経ち、俺ら3年の最後の試合も間近に迫りつつあった。

 

 

 

 

ということで

 

今回はここまでそれでは。

 

 

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