MAEDAトシロー

レッテルコンプレックス ㉘ 中学生編

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どうも

 

前回の続きです。

 

 

 

学校では平然を装って楽しくはしゃいでいたがいつも気が気でなかった。

 

上達しない野球とマラソン大会以降一層もてはやされる学校生活での俺。

 

また中2から作り上げてきたお笑いキャラというのが定着して、ウブな俺でも女子との接点もできていた。

 

それは水と油のように俺を別け隔て容赦なく突きつけた。

 

 

 

学校での俺は、俺の理想とした世界だった。

 

ただ、いつも俺の足を引っ張る闇がセットだった。

 

 

小学生の時もそのパターンだった。

 

 

そして、また俺はこの悩みを誰にも打ち明けれずにいた。

 

 

どうしても、明るく過ごしている俺ともがき苦しんで悩んでいる野球部の俺をどう話せばいいのか分からなかった。

 

 

話したところで相手は理解できないと思った。

 

親父ですら俺のことが分からないのに身内以外の人間に分かるはずがないと思った。

 

 

 

それからいくらか月日が過ぎていった。

 

 

家に帰っての自主トレは相変わらずだった。

 

 

素振り、筋トレ、ランニング、守備練、投球フォームのチェック、親父の仕事が休みの日にはバッティングセンターに行き、帰ってきてからまた素振り。

 

 

学校の勉強・宿題そっちのけで取り組んでいた。

 

 

この時俺の両手のまめは凄いことになっていた。

 

毎日素振りにバッティングセンターでの打ち込みの影響が出ていた。

 

お相撲さんの足の裏のように固くゴツゴツしたまめが至るところにできていた。

 

フォームを意識するあまりいつもバットを強く握っていた。

 

強く握れば握るほど手にまめができた。

 

 

 

このまめも肩に力が抜けてリラックスしたフォームで振れば、お相撲さんの足の裏のようにゴツゴツしたまめではなく自然な形のバットと手が密着しやすい場所に点々とできるのが普通である。

 

 

俺はゴツゴツしたまめが手のひらから出たサインであることに気づかず、これを努力の証だと誇りに思っていた。

 

 

手のまめだけは俺を癒やした。

 

 

手のまめを見るとこいつだけは俺を裏切らないと思った。

 

 

結果が伴わない現状のバッティングで唯一着実に固くゴツゴツしていくまめは俺を慰めてくれた。

 

 

 

家の屋根付き駐車場で素振りをしながらまめを眺め、

 

 

(努力は絶対に裏切らない)

 

 

そう思ってはバットを振り続けた。

 

 

 

中2の3学期も残すところあと僅かとなった。

 

 

中1と比べるとあっという間だった。

 

学校生活にも慣れ、野球部も1つ上の先輩が引退して少なからず気楽にはプレーできていた。

 

 

 

とは言っても野球部での俺はいつも通りで不調の極みだった。

 

俺の不調の全貌は、野球部のチームメイト以外にはあまり浸透しておらず立木やりょう、岡本達は知らなかった。

 

 

勿論俺から話すわけがない。

 

 

できるのならこのまま野球部での実情は、野球部以外に誰も知られたくない。

 

隠し通せるなら隠し通して全て俺の闇の中に蓋をしてしまいたい。

 

 

しかし、現実は甘くない。

 

隠そうとすればするほどあっちからこっちに引き寄せてしまう。

 

 

 

それは何気ない放課後の部活だった。

 

時刻も17時くらいで、ウォーミングアップ、キャッチボールを終え全体練習のノックを行っていた。

 

俺は、いつも通りファーストを守っていた。

 

ファーストというのはキャッチャーのようにファーストミットと呼ばれる専用のグローブがある。

 

中々の値段がするので俺の家庭では購入できない。

 

なので、野球部の部費で購入されたファーストミットを使用しノックを受けていた。

 

 

 

すると、いつも運動場の端っこの方で練習している陸上部が野球部の俺から見たら真正面の階段付近に集まりだしていた。

 

 

 

(えっ??なんで??)

 

 

 

その数はざっと12~15人。

 

 

同学年の立木、りょう、岡本の姿があり、その1個下の陸上部の後輩たちもいる。

 

この立木達が集まりだした場所は、野球の試合会場でいうならば応援席のような場所だ。

 

俺らの運動場にそんな豪華な設備はないが、それに近い見晴らしの良い自然にできた応援席のようなもの。

 

 

 

とりあえず変な汗が出てきた。

 

それと同時に動悸が一気に激しくなり、嫌なイメージが頭の中を駆け巡った。

 

普通なら「なんで陸上部おっと?あいつら暇とばいなー」とか

 

「あいつら茶々入れにきたな」と言った考えが浮かぶのが普通だろう。

 

または、何も気にしないというかどうでもいいとかそういった冷めた感情。

 

 

 

俺の場合それが全て逆の発想になる。

 

 

 

エラーしたらどうしようとか、

 

暴投したらどうしようとか、

 

立木やりょう、岡本達の前で失敗はできないとか、

 

陸上部の後輩たちにかっこ悪い姿を見せられないとか、

 

投げ方を笑われたらどうしようとか、

 

早くどっか行ってくれとか、

 

いちいち鑑賞しにくるなとか、

 

 

 

もうそんな事ばかり頭の中で渦を巻く。

 

 

それに動悸が激しくなり、体の動きが鈍る。

 

いつもの練習でも投げ方を気にしたり、それによって守備に影響してエラーするし暴投するしで大変なのに、立木達の存在でさらに頭にモヤがかかり動悸も激しくなりと何がなんだか分からない。

 

 

 

それは現実となった。

 

 

 

全体練習のノックでは、最後にバックホームと呼ばれるノックを受けた野手がホームに向かって力強く投げ、監督のオッケイサインが出ると上がれるという方法を取っていた。

 

 

レフト→センター→ライト→ピッチャー→サード→ショート→セカンド→ファースト→キャッチャーといった具合に順番に打っていく。

 

エラーした場合は、その場で「もう一本!」と大きな声を出し再度ノックを受ける。

 

 

俺のファーストは最後から2番目。

 

野手としては最後にノックを受けるポジション。

 

 

 

バックホームが始まった。

 

レフトのいぶし銀山中から順にノックを受け上がっていく。

 

外野が終わり、次は内野のピッチャーに移った。

 

 

 

この時点で俺はそわそわしている。

 

グローブをしきりに見てはあたかもグローブに欠陥でもあるかのように曲げたりして布石を打つことに必死だった。

 

どうせ一発合格は無理だろうから後で言い訳をしやすいように「これ俺のグローブじゃないんだぜ」感を醸し出した。

 

その間も色んな嫌なイメージや動悸が激しい。

 

早くいなくなってくれることを願った。

 

 

 

しかしそれは叶うわけもなく、俺の出番がきた。

 

 

ちょうどノックを打つ監督の後ろの位置に陸上部軍団がひしめき合っており、どうやっても目に入る。

 

こうなるとノックではなく陸上部の1人1人の顔を無意識のうちに確認してしまう。

 

監督、立木、監督、りょう、監督、岡本、監督、後輩たち、監督…のように。

 

 

 

 

(まじ簡単なやつにしてくれ)

 

 

 

 

こう考えれば考える程難しいボールが飛んでくるものである。

 

 

前に出てショートバウンドで捕球するようなボールが来た。

 

もうこの前に出ないとと思った瞬間に判断は遅れている。

 

微妙な遅れに気づき、だからと言って今更前に出ても遅い。

 

そうなると後ろに下がって取りやすい位置で捕球するか判断しなければいけない。

 

だがこう考えている時点でもう既に遅い。

 

俺はその場で捕球する姿勢になった。

 

 

 

 

パンッ。

 

 

 

 

軟式ボールは無情にもグローブを弾いた。

 

 

 

「もう一本!!」

 

 

 

とは言ったものの本当はもう一本どころではない。

 

こんなノック早く上がりたい。

 

さっきのエラーで俄然陸上部の様子が気になる。

 

 

 

さっきより簡単なボールが飛んできた。

 

これなら動かずに捌ける。

 

俺は確実に捕球し、ホームに投げようとした。

 

 

 

(んんっ)

 

 

 

陸上部が目に入った。

 

一瞬時が止まったように感じ1つのモヤがかかる。

 

 

 

(投げ方変なくないかな…)

 

 

 

それから時が動きだし、俺は暴投級のボールを投げていた。

 

 

 

案の定、監督は頷かない。

 

 

 

 

「もう一本お願いしゃーす!!」

 

 

 

 

(もういいからやめてくれ、もう上げさせてくれ)

 

 

 

ボールが飛んできた。

 

もう俺の頭は完全に思考停止状態、そして軽いパニック状態に陥った。

 

前に出るとかショートバウンドで出るとかそういった判断が完全にできない。

 

 

 

 

パンッ。

 

 

 

 

また弾いた。

 

すると監督が、

 

「おい山下、もっと腰を落としてしっかり捕球せんか。今のは前に出てショートバウンドで取るほうがよかやろうが。しっかりボールを見て判断して捕球せろ」

 

 

 

「ははい!」

 

 

 

 

(もうやめてくれもう無理、もうこんな辱めは無理)

 

 

 

こうなってくると陸上部の様子が気になって仕方がない。

 

喋ってる様子が全部俺のひそひそ話に見える。

 

ボールを見ているようで陸上部ばかり見ている。

 

 

その後もエラーし、監督がもうこれぐらいしか捕れんやろ的なボテボテのボールを捕球しちょっと逸れたが「オッケイ」と言われ俺はやっと上がることができた。

 

 

 

正直気が気でない。

 

 

上がったとはいえ、まだ陸上部が後ろにいる。

 

 

 

(言い訳をせんと)

 

 

 

言い訳といっても練習中である。

 

遊びにきている陸上部に野球部から喋りかけるわけにはいかない。

 

 

もうこれならひたすらファーストミットをいじって、なんかこのグローブが調子悪いんだよね的な雰囲気を醸し出した。

 

 

 

そうこうするうちに陸上部は元の運動場の端っこの方に移動していった。

 

どうやら陸上部の顧問が休みだったらしい。

 

なのでちょろっと野球部を見に来たらしい。

 

俺はホッとしたのと同時に自分の醜態を明日の学校生活でどう処理しようかと考えた。

 

とりあえずグローブのせいにしてその場を凌ごうと考えた。

 

素人ならグローブが俺のじゃないし、変な型になっていて取りづらいんだよねと言えば分かんないと思った。

 

 

 

練習が終わり、明日の学校での作戦を考えながら眠りに着いた。

 

 

次の日、1人で学校に向かい何食わぬ顔で昨日のエラーの代弁をしようといつもつるんでいる立木とりょうと岡本に「おはよう」と同時に話そうとした。

 

 

だが、どうも別に何も気にしてない的な顔をしている。

 

りょうだけはちょっと笑っていたが、別にいちいち突っ込んでこなかった。

 

俺もこの対応に逆に言い出しづらくなり、これでいいのか分からなかったが相手も相手で何も言ってこないからどうも言い出すタイミングが掴めない。

 

立木はいつもの感じで天然なのか分からないふざけた対応をしてくるし、岡本は岡本で元気にふざけている。

 

りょうだけ気になったが別に普通だった。

 

これはこれで俺の中で締りが悪い形になったが、これは仕方ないと思いそれから俺も普通に学校生活を過ごした。

 

 

 

それから冬の寒い季節も終わり、桜が咲く季節がきた。

 

そう3年生が卒業する時期だ。

 

この3年生は俺の中でも色々とお世話になったので少し寂しかった。

 

 

 

(俺ももうすぐ3年かー)

 

 

 

卒業式も終わり、それから二十日ほど経った。

 

次は始業式だ。

 

去年とは違い、新入生如きで緊張することもなかった。

 

だって俺らには学校の風習がある。

 

それが俺を守ってくれる。

 

始業式も無事に終わり、俺は3年へとまた1つ学年を上げた。

 

 

 

そして、また新たな出会いがそこにはあった。

 

 

 

 

長くなったのでこの辺で。

 

 

それでは。

 

 

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