MAEDAトシロー

レッテルコンプレックス ㉗ 中学生編

この記事は7分で読めます

 

どうも

 

前回の続きです。

 

 

サッカーも上の空だ。

 

 

俺が思うにまだ女子は動いていない。

 

と思いたい。

 

 

 

サッカーを心ここに非ずで済ませ、5時間目の授業にでた。

 

そして6時間目までの授業全てが終わった。

 

 

 

(えっまさかこれで終わり)

 

 

 

6時間目が終わり掃除の時間が始まった。

 

女子はいつもどおりに過ごしている。

 

もしかしたら俺の知らない間にチョコを配っているのかもしれないが全くそんな気配がない。

 

男子も貰っている雰囲気もない。

 

掃除が終わり、下校の前のホームルームが始まった。

 

 

 

「はーい、今日も1日ごくろうさん、明日も元気に学校にくるように」

 

「起立 礼」

 

「さようなら」

 

 

 

ホームルームも終わった。

 

 

 

(んっ?今日バレンタイン?いや日にちは合ってるぜ、いやでもチョコ配る空気じゃなくない?えっ?もしかしてもう配り終わった系?)

 

 

 

そんな邪念が頭を駆け巡った。

 

 

先生はホームルームが終わった後、教室の扉を開け廊下に出て職員室に歩き始めた。

 

 

先生の足音が遠のいたのと同時に

 

「男子ーチョコ作ってきたよー!」

 

 

俺の好きな子ランキング2位の女子がクラスに響く声で言った。

 

 

 

(あっぶねー義理チョコすら貰えずに終わるところだったぜ)

 

 

 

この女子は、たまに席が隣あったり、またハンドボール部ということでグラウンドの隣近所でもあった野球部の俺とは仲が良かった。

 

ただ仲がいいとは言っても所詮は恋愛対象には見られていない男子なので、それ以上でもそれ以下でもない。

 

からかってはくるけれどもそれは別に好きでもないし嫌いでもないというような空気があった。

 

 

 

そのランキング2位の女子は、まず立木にチョコをプレゼントしていた。

 

チョコと言っても義理チョコである。

 

タッパにミートボール程の大きさのホワイトチョコを十個程入れ、それを立木に渡していた。

 

 

 

立木はそれをすぐ口に入れ

 

 

「うめー」

 

 

と意味の分からん大声ではしゃぎ貰えたことにガッツポーズをしていた。

 

 

 

(いやいやお前はたまに貰ってただろ)

 

 

 

立木というのは本当に面白いやつである。

 

そして立木は意外とモテる。

 

 

それに立木は運動バカだ。

 

保育園、小学校、中学校、高校というのはスポーツができるだけでちょっとしたモテ期がくると俺は思っている。

 

立木はそのちょっとしたモテ期でおいしい思いをしているやつだ。

 

 

 

それは俺が小学校3年の時に聞いた話なのだが。

 

 

立木は地元にある保育園の子供だった。

 

その保育園には俺の好きな子ランキング5位の女子もその保育園にいた。

 

今こう考えると俺らの地元というのは、保育園、小学校、中学校が一貫しているという面白い地域だ。

 

だから地元の仲間意識も他に比べると遥かに高い。

 

俺は何故か分からないが親の勧めで隣町の幼稚園に入ったのでこの保育園のことは知らない。

 

それで、立木達ももう少しで保育園を卒業することになり、最後の出し物をすることになった。

 

はっきりしたことは覚えてないが、たぶん白雪姫だった思う。

 

その白雪姫の王子に立木が、姫のほうに俺の好きな子ランキング5位の女子が抜擢された。

 

本人たちも最初はこの昔話がどんなものか分からなかったのだろう、主人公とヒロイン役に選ばれ大層喜んだらしい。

 

実際にリハーサルが始まると、その物語の大事なシーンにキスをする場面があることを知りお互い驚いていた。

 

 

 

ただリハーサルの時は顔を近づけるだけのキスをするという演技だった。

 

本番もそのようにする筈だった。

 

しかし、そういう時というのは何が起こるか分からないものである。

 

 

 

白雪姫ことランキング5位の女子が毒リンゴで倒れているところに颯爽と王子こと立木が現れた。

 

王子こと立木は、そのぐったりとした白雪姫ことランキング5位の女子を心配に思い抱きかかえ、そっと

 

 

 

 

 

キスしたのである。

 

 

 

 

白雪姫もまさかキスされるとは思ってもいなかったのでビックリである。

 

 

 

キスである。

 

 

チュウである。

 

 

 

 

俺なんか中2にもなってまだ手すら握った経験すらないのに、立木はその遥か上のチュウをする場面を経験したのである。

 

 

考えられない。

 

 

 

そしてこれが立木伝説となり小学校のクラスメイト中周知の事実となった。

 

俺の好きな子ランキング5位の女子からしたらとんだ災難である。

 

立木と付き合ってんの?とか立木が好きなんやろ?とか、そんなからかいが頻繁に起こった。

 

当の本人は何もなかったの如く当たり前に学校生活を送っていたので、そうなると矛先は5位の女子に注がれる。

 

あまりにも可哀想なぐらいに男子からからかわれるので、周りの女子がそれを止めさせようとする日常を小学校低学年の時は毎日見た。

 

 

 

本当はただ恥ずかしがっていただけかもしれない。

 

その真相は中学生になっても分からなかったが、男子もからかうのに飽きたのかその話はほとんど学校ではしなくなった。

 

 

 

俺からしたらそんなことはどうでもいいことであって、事実が大事なのである。

 

そう立木はもう既にファーストキスを卒業しているという事実だ。

 

 

立木はそれからも天然なのかよく分からない独特の雰囲気でクラスを笑わかせ、スポーツでは運動神経のよさをいかんなく発揮した。

 

こいつは小学校の時からちょくちょく女子とも仲が良く、俺とは違う恋愛対象にもなり得るという目で女子から見られていた。

 

 

 

そんな昔話がふと頭によぎったが、そんなこと考えている場合ではない。

 

 

俺の好きな子ランキング2位の女子のタッパを見る限り明らかに学年の男子の人数よりも少ない。

 

もしこのクラスだけに配るのであればギリギリ足りないぐらい。

 

 

 

(これはもしかするともしかの場合もあるんじゃね)

 

 

 

さすがに不安になる。

 

何としてでも欲しい。

 

義理チョコでもなんでもいいから欲しい。

 

ただがっつくのも嫌。

 

だけどすました顔で配られるのを待つ勇気もない。

 

俺は動いた。

 

 

 

「ふぇーい、ねー俺の分はー?」

 

 

「えーないよー」

 

 

 

 

(えっ??ない???そんなことある???)

 

 

 

「いやそれ嘘やろ」

 

 

「ほんとだよ。山下の分は作ってないもん」

 

 

「はっ?まじで?」

 

 

「うん。作ってないよ」

 

 

 

 

(あーなるほど、もしかするともしかのパターンね……)

 

 

 

 

これは中々のショックである。

 

特に仲の良い立木は貰っているのに俺は貰っていないというこの状況がなんとも惨めなもんだ。

 

 

 

 

(いやいや無理無理無理、このまま「はいそうですか」って引き下がれない、まじ今日貰えんとまじ無理)

 

 

 

 

俺はどうしても義理チョコが欲しい。

 

というか早くバレンタイン童貞を卒業したい。

 

それじゃないと明日からバレンタインまだ貰ったことがない俺と貰ったことがあるクラスメイト達との学校生活に支障をきたしそうだ。

 

野球でも上手くいってないのに学校でも上手くいってなかったらもう俺はどうすればいいか分からなくなる。

 

あーーーーーどうすればいいのだ。

 

あーーもうこうなったら強行突破しかない。

 

 

 

 

「てかそのチョコ何個あっと?」

 

 

「10個ぐらいかなたぶん」

 

 

「じゃあ俺に1個ぐらいくれてもよくない?」

 

 

「いやそれは無理。だって他の人にあげるもん」

 

 

「いやまじやれって」

 

 

「いや無理」

 

 

「はーい頂きーもらいましたー」

 

 

「あーサイテー!!!!」

 

 

 

ということで、俺は女子の隙を見計らって義理チョコをひとつまみして即口に入れて食べた。

 

その後も、ランキング2位の女子はあーだこーだ言ってきたがそんなこと知ったこっちゃない。

 

だって食べたということは、それは俺のチョコだったということでそれはつまり俺にあげようとしていた義理チョコだったのだという自己中心的な解釈を俺はした。

 

貰ったというか食べたのならもう用はない。

 

俺はささっと部活の準備をして教室を出た。

 

中2の俺はウブさもあったが、絶対に手に入れたいと思ったものに対しての執着心は小学2年の遠足の頃から変わっていなかった。

 

部活の方は、バッティングの調子はいつもどおり芳しくなかったが心は少し晴れていた。

 

 

 

 

(俺もやっとバレンタイン童貞卒業したのかー)

 

 

(まーその後本命チョコの打診もなかったけど義理チョコってやっぱうめーなー)

 

 

 

 

そんなことを思いながら俺は一向に成長しないバッティング練習を行っていた。

 

 

 

 

やっと重大なイベントも終わりふと一休みしたい気分になったが、俺の場合そうもいかない。

 

 

 

そろそろ本格的にというか本格的にはやっているのだが、いかんせんバッティングが中々成長していない。

 

12月、1月、2月の中旬までは走り込みなどの練習が中心だったが、バレンタインデーを過ぎた辺りから本格的な全体練習に移っている。

 

俊足ゆうきは練習でも場外ホームランなど大きな当たりを連発しているのに、俺は内野の頭を超える打球がやっとでほとんどボテボテの内野ゴロ。

 

もっと悪い時は、バッティング練習で連続ピッチャーゴロという始末。

 

いぶし銀山中もいぶし銀に磨きがかかりライナー性の当たりや外野の間を抜く長打コースの打球を放っている。

 

他のチームメイトや後輩たちも冬の練習を乗り越え下半身が太くなっていた。

 

打球や守備、走塁に力強さが増している。

 

 

 

では俺の方はというと、日々の自主トレで体は磨きがかかっていたがそれが一連の動きをしていなかった。

 

明らかに個々の部位がいきり立ちそれぞれが目立とうとしているような統制のとれていない状態になっていた。

 

そうなると上半身と下半身の連携もとれていないので打球も飛ぶはずがない。

 

ましてやコンパクトなスイングを意識し過ぎている状態だ。

 

上半身ですら言うことを聞いていない。

 

そうなってくると守備や送球も同調するかの如くエラーや暴投が目立つ。

 

 

 

 

俺の野球の状況は、去年となんら成長していなかった。

 

 

 

 

ということで今日はここまで。

 

 

それでは。

 

 

あわせて読みたい

  1. 少年時代 山下としろー 小説家になろう 執筆 レッテルコンプレックス
  2. 中学生 生活 少年時代 山下としろー 小説家になろう 執筆 レッテルコンプレックス
  3. 少年時代 山下としろー 小説家になろう 執筆 レッテルコンプレックス
  4. 少年時代 山下としろー 小説家になろう 執筆 レッテルコンプレックス
  5. 少年時代 山下としろー 小説家になろう 執筆 レッテルコンプレックス
  6. 中学生 生活 少年時代 山下としろー 小説家になろう 執筆 レッテルコンプレックス

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

プロフィール

《名前》MAEDAトシロー

山下としろー ツイッター 

 
twitter

 

趣味⇒読書、歩くこと、自然

ツイッター

RETURN TOP