MAEDAトシロー

レッテルコンプレックス ㉖ 中学生編

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どうも、前回の続きです。

 

 

 

 

冬休みと言っても別段何かをするということもない。

 

中学生ができる遊びなんて限られている。

 

お金も遊ぶ場所もそう多くない。

 

冬休みぐらい俺も少しは遊ぼうと思った。

 

さすがに自主トレばっかやって友達の誘いも断るってなるとそれもそれで嫌だし。

 

付き合い悪いやつとは思われたくない。

 

でも野球の方も疎かにしたくない。

 

少しぐらいは誘いに乗ったほうがいいだろうし、俺からの誘いもしたほうがいいと思った。

 

その頃の俺は、家に帰って何をしているか分からないキャラというのも確立していた。

 

学校でのキャラと野球部でのキャラも違っているように映るし、それでいて遊びの誘いを断っては家にこもって何かをしている。

 

不思議な子だった。

 

 

 

 

冬休み期間中は、数日間仲のいい立木、りょう、岡本と遊んだり、野球部のゆうきとサッカーをしたりして過ごした。

 

それ以外の日は、自主トレに精を出し早くコンパクトなスイングを手に入れようと努力した。

 

 

 

 

そうこうしているうちに冬休みも終わり、中学2年も残るところあと一学期となった。

 

 

 

この期間で男子が一番に考えることは1つ。

 

 

 

そうバレンタイン。

 

 

 

俺は未だに1個も貰ったことがない。

 

義理チョコもだ。

 

そんなだったから俺の小、中、高校で大嫌いなイベントトップ3の中の1つにバレンタインデーは入っている。

 

 

 

誰も俺にはくれない。

 

それなのにバレンタインデーが近づいてくるとそわそわして期待する。

 

バレンタインデー当日には、そわそわしているし期待で胸がいっぱいだし学校になんか集中できない。

 

それで女子からの「山下君ちょっといい」の一言を待っている。

 

待っているのに誰からもお呼びがかからない。

 

友達の数人は本命チョコや義理チョコを貰っているのに俺は1つも貰えない。

 

放課後を過ぎてもまだ期待している。

 

そして夕方近くになって俺には無いんだと気づく。

 

 

 

 

(またなしかー……まじ絶望)

 

 

 

 

家に帰ると、そんな惨めな俺を知ってか知らずかおふくろがどこのどんな物か分からんようなチョコが台所のテーブルの上においてある。

 

それを見てさらにむさしくなる。

 

だけど、食べる。

 

甘い物好きだし。

 

すると親父がタクシーの仕事から帰ってきて小さな可愛らしい包を携えて家に帰ってくる。

 

中身を見ると案の定チョコ。

 

親父にすら負けてさらにむさしくなる。

 

 

 

 

(義理チョコぐらい全員に配れよ)

 

 

そう思っては学校の女を呪いたくなる。

 

 

 

 

 

俺のバレンタインのイメージはこんな感じだ。

 

 

 

 

だが今回は違う。

 

 

俺は晴れて人気者になっているのだから。

 

今までは目立ってないから貰えなかったのであって、今の俺は誰もが知る存在。

 

期待せずにはおれない。

 

 

 

 

 

(絶対今年はチョコを貰うぜ)

 

 

 

 

バレンタイン当日。

 

 

 

期待と不安で昨日はあまり眠れなかった。

 

たぶんあいつとあいつとあいつから義理チョコぐらいは貰えるかな。

 

いやあいつも義理チョコぐらいはくれるだろう。

 

あいついっつも俺にちょっかい出すからあいつは確実かな。

 

 

 

そんなことを考えて寝付くまでに時間がかかった。

 

 

 

でも意識ははっきりしている。

 

そう今日はバレンタインデーである。

 

 

 

俺は家を出た。

 

 

中学2年になってからは同じ地区のりょうと一緒に学校に行くことが多かった。

 

りょうは山の頂のほうだから待ち合わせ時間に遅れることが多い。

 

りょうは時間にルーズな男で、そんな日は1人で学校に行く。

 

今日は珍しく待ち合わせ時間にりょうと合流ができた。

 

りょうは学校屈指のイケメン。

 

 

 

今日だけは嫉妬せずにはいられない。

 

りょうは毎回義理チョコも本命チョコも貰っている。

 

羨ましすぎる。

 

 

 

そんなことを思いながら俺らは学校に向かった。

 

 

 

教室に入った。

 

 

なんかそわそわしてしまう。

 

女子の一挙手一投足に敏感に反応してしまう。

 

その動きが俺に関係があるのではないかと考えてしまう。

 

そうなると自然と女子の方を眺めてしまいハッとなる。

 

 

 

 

(とりあえずささっと義理チョコ1個ゲットして落ち着きてー)

 

 

 

 

周りの男子もなんかそわそわしていた。

 

1時間目が始まった。

 

期待と不安で押し潰されそうである。

 

それから2時間目、3時間目、4時間目と過ぎお昼ごはんの時間になった。

 

 

まだ貰えていない。

 

不安になる。

 

 

 

去年の俺を思い出してしまう。

 

 

 

それはまだ権力株のゆうきらと喧嘩中だった中1の学校生活だった。

 

 

 

小学校でゴリラ顔で幾度となく悩まされていたことは記憶に新しい。

 

 

しかし何が起こったのか中学に上がるとゴリラ顔が徐々に猿顔に少しランクアップしていた。

 

 

その甲斐あってか同級生からゴリラという悪口はめっきり減った。

 

逆に別のゴリラ顔の子に「ゴリラゴリラ」と悪口を言うようになった。

 

小学校の時の憂さ晴らしをようやく中学校で果たしたのである。

 

 

 

ただ、ゲジマユと肌の色は相変わらずだった。

 

特に眉毛は中学校の制度上剃ることができず、眉毛の薄い子が本当に羨ましかった。

 

肌の色も同じで、白い子が羨ましかった。

 

でも肌の色はもう諦めていた。

 

どう俺が頑張ろうと黒い肌を白くすることはできない。

 

 

 

そんなある日、俺は2時間目の国語の授業を受けていた。

 

先生が何か忘れ物をしたと言って職員室にちょっと行ってくるから自習しててと言って教室から出ていった。

 

そうなったら教室は騒がしくなるものだ。

 

ぺちゃくちゃとお喋りが始まった。

 

中1の俺はそんな喋るキャラじゃなかったのでボーっとしていた。

 

すると前の席の、ボランティア活動で溝に足を滑らせて俺にテヘ顔で助けを乞うたが俺は何食わぬ顔で通り過ぎて後ろから怒鳴り散らしながら走ってきて男とはについて語ってきた女子がパッと俺の方に顔を向けた。

 

 

 

「ねー山下ってゲジマユだよね」

 

 

「(ギクッ)ええっ?」

 

 

「めっちゃ太くない眉毛?私の親指2本分くらいあるよ」

 

 

「ううん」

 

 

「私が眉毛剃ってあげようか、それじゃ絶対モテないよ」

 

 

「い、いやいい」

 

 

 

この子は学年でもトップ3には入る可愛い子でそんな子からいきなり「山下ってゲジマユだよね」と言われ俺は面食らってしまった。

 

その頃の俺の恋愛論として、

 

好きな子できるといいねとか好きな子いないの?とかモテないよとか言われるとその時点で俺は恋愛対象ではないという法則を見つけていた。

 

なので、ちょっと気になっているクラスの可愛い子にこれを言われたのがショックすぎて、自分の眉毛の濃さ太さを呪った。

 

 

 

そのトラウマは対女子に対していっそうウブな男子に俺を作り上げた。

 

 

 

俺は他人の目を見ることができない。

 

なぜか分からないが相手の目をじーっと見ると俺の中の全てを見透かされそうで怖くなる。

 

俺の過去を俺の秘密を俺の全てを知られてしまいそうで怖くなる。

 

これは女子の場合もっと顕著で、ゲジマユと肌の黒さが相まってもっと見れなくなる。

 

そうなると、遠目から相手を眺めるか顔を背けて喋るかして女子と接するしかない。

 

ただ顔を背けて喋る場合どうやっても一度は相手の顔を見ないとどんな表情でその言葉を言ったのか分からない。

 

それに人と喋る時の礼儀として相手の顔を見るのはウブな俺でも分かる。

 

なので、喋るとチラッ、喋るとチラッ、喋るとチラッというように顔を動かさず目だけを動かして相手の様子を窺う。

 

まーそうなると明らかに相手からしたら違和感半端ない。

 

 

 

「ねー山下教室の掃除私たちほうきでいいでしょ、男子なんだしぞうきんしてよ」

 

 

「(チラッ)はっ?いややし」

 

 

「ん?いやぞうきんしてよ。一昨日ぞうきんしたじゃん」

 

 

「(チラッ)ぞうきんは代わりばんこやろ、俺らだってしなくないし」

 

 

「ん?ね、チラ見したよね?今チラッとこっちみたよね?」

 

 

「(チラッ)はっ?してないし」

 

 

「あっ、やっぱした!チラ見とかキモい―」

 

 

 

 

それから俺の女子からのあだ名はチラ見の山下になった。

 

そうやって呼ばれれば呼ばれるほど相手の顔を見れなくなり、そうなるとどんどんチラ見の癖が染み付いていく。

 

女子はそんな俺をウブな男子としてからかう。

 

俺と喋ると「ねー山下顔見てよー」とか「山下ウブでかわいいー」とか。

 

 

ある意味俺は女子から注目された。

 

 

ただこれの辛いところは、思春期真っ最中で好きだの嫌いだの付き合うだの手を繋ぐだのチョコを貰うだの一緒に帰るだのに興味関心意欲が敏感になっている俺からしたらとんだ災難である。

 

 

要は、「お前は恋愛対象としては見ていないよ」と遠回しに言われているようなものである。

 

 

これは辛すぎる。

 

俺も好きな子と一緒に帰ったり、手を繋いだり、口喧嘩したり、ゲームセンターに行ったり、宿題教えて貰ったりしたい。

 

 

 

こうやってからかってくる子には、ちょっと気になっている子も含まれていた。

 

 

 

中学生の俺らの恋バナで、好きな子ランキングなるものがある。

 

それは全学年を含めて好きだという女子を勝手にランキングするというものだ。

 

俺の場合それがトップ10くらいまであり、トップ1に近づくにつれて好きという感情が強く、トップ10に近づくにつれて気になっているという感情が強くなる仕組みだ。

 

その好きな子ランキングは本当に仲の良い親友にしか喋らず、逆にこれを知らなければ本当の意味での親友にはなれないという暗黙のルールが俺らの中学にはあった。

 

 

そんな俺のランキングに入っている子が尽くからかってきたので、これは本当に辛い。

 

 

 

 

 

 

(まじ絶望)

 

 

 

 

 

 

ただその変わり女子との接点があるので嬉しいのは嬉しい。

 

だけど辛い。

 

でも嬉しい。

 

でも辛い。

 

 

 

ここでも葛藤である。

 

 

 

 

(はぁー)

 

 

 

 

 

 

パシパシ。

 

今はそんな昔のことを思い出したところで何も変わらない。

 

今に集中。今に集中。

 

まだお昼ごはんだ。

 

その後、昼休みも5時間目も6時間目も放課後もある。

 

まだチャンスはある。

 

俺は人気者になったのだ。

 

大丈夫大丈夫。

 

 

 

そうこうしているうちに昼ごはんを食べ終わって昼休みに入った。

 

中2になると運動場の半面を使用する権限があるので、男子は昼休みサッカーをするのが定番だ。

 

ここらへんの制度は小学校をそのまま継承している。

 

俺らはサッカーをしに運動場にでた。

 

俺だけは一番最後に教室を出て運動場に向かった。

 

 

 

まだ声はかからない。

 

 

 

 

 

 

それでは、今日はここまで。

 

 

 

 

 

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